そろばんか公文式かの議論
「公文式がいい! そろばんは習う必要はない! 無駄だ!」
「公文式は詰め込み教育。公文式だと、考えられない子どもになる! そろばんのほうがいい!」
このような議論があるようです。
そろばん派、公文式派ともに、なぜ一方のみを強く推しているのか、その根拠を知りたくて、その手の記事を読み漁りました。
結果、大多数がつぎのような「一個人の経験」に基づくものでした。
・東大卒の夫は「そろばんは不要」と言っていた(個人の意見)
・まわりのみんなが公文式だった(個人の意見)
・そろばんは思考力を鍛える(科学的なソースなし。個人の意見)
飽きれますね。
なぜって?
これは「ここは雨。だから世界中、雨だ」といっているのと同じだからです。
「自分」「友達」「配偶者」など、ものすごく狭い範囲では、この手の記事を書くひとたちの主張は正しいのでしょう。
しかし、それがそのまま、ほかのひとにも当てはまりません。
「じゃあ、偉そうにいうオマエはどうなんだよ?」
そういわれそうなので、結論から先に書きますが、そろばんと公文式の「長所と短所」を把握して、「目的」に応じて選べばいいだけじゃないの、と思います。
もっというなら、そろばんのたし算、ひき算だけであれば、当サイトにある教えかただと習得に時間がかからないので、小学校一年生のうちに(※)そろばんもできるようにすればいいいのでは、と思っています。
※たし算とひき算の繰り上がり、繰り下がりが完全にできるようになっていれば、年齢は関係ありません。
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そろばんの長所は、社会人になっても「正確」に「四則演算」を「素早く」「暗算」できる!
そろばんを習得すると「四則演算」を「素早く」「暗算」できるスキルが身につきます。
しかも、ある程度の練習を重ねれば、ほとんど計算ミスしなくなります。つまり「正確」に計算できるようになるわけですね。
※練度によりますが、2桁、3桁と桁数が増えても計算ミスしにくくなります。
そろばんの長所:四則演算を正確に暗算できるようになる
※四則演算とは、たし算、ひき算、かけ算、わり算のこと。
ちなみに、なぜそのように言えるのでしょうか。
じっくり解説します。
そろばん「以外」の計算法の根底にあるのは「暗記」です。
「2+6=10」「8+2=10」のように覚えているからこそ、すぐに答えを出せるわけですね。
しかし、暗記は「覚えているか」「覚えていないか」の世界です(「あれ?あれを何と言うんだっけ?」となることもありますよね)。
つまり、そろばん以外の計算法だと、計算式とその答えをふいに忘れしまう、勘違いしてしまうこともあって、結果、計算ミスとなります。
それを防ぐために、毎日、毎日、計算問題を解くわけですが――。
一方、そろばんは、玉の上げ下げのパターンを、からだに叩き込みます。
それ以外は一切覚えないので、自転車の乗り方と同じく忘れにくい、すなわち、計算ミスをしにくくなっています。
それは年を重ねたあとも同じです。
からだで覚えているので、年をとってからも、そろばんはできます。
中学受験はもちろん、その後の人生でずーっと使うので、人生においてこれほど役立つ習い事はないと思います。
そろばんの長所:年をとってからも役立つ!
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そろばんの短所は「四則演算しかできないこと」「中学受験との相性がよくないこと」
そろばんの短所は、四則演算しかできない、すなわち、分数、小数などの計算ができないことです。
とはいえ、分数も小数も四則演算が根底にあるので、四則演算がしっかりできればそれほど難しく感じないと思いますが…。その辺の話は置いておきます。
そろばんの欠点:四則演算しかできない
中学受験を考えているひとにとって、最大の欠点は「タイミングが悪い」ではないでしょうか。これが中学受験でそろばんが流行らない最大の理由ではないか、と個人的には考えています。
どういうことでしょうか。
そろばんを習うには、算数がある程度できないといけません。
イメージは以下です。
・四則演算は完璧!
・正確に早く暗算できるようになるために、そろばんを習う
なぜ、四則演算の勉強が一通り終わったあとに、そろばんなのでしょうか。
「たし算」で考えてみましょう。
そろばんでは、最初に「2+1」を学習したあと、すぐに「2+3」も計算します。
実は、そろばんでは「2+3」は「5」に繰り上がります(正確には繰り上がりではないのかもしれませんが、繰り上がりのようにみえます)。
いきなり繰り上がりの知識が必要なわけですね。
それだけではありません。
「3+8」を計算するとき、「8は、3から2を借りて10」「3は2を貸したので1」「なので、10と1」と考えます。
しかも、そろばんでは、これを一瞬で処理します。
つまり、繰り上がり、繰り下がりの知識だけではなく、その完成度の高さも求められるのですね。
というわけで、高校受験を考えているひとたちは、つぎのタイミングでそろばんを習わせるのが理想です。
<そろばんを習得する一般的なタイミング>
・小学校3、4年生あたりで四則演算はしっかりできるようになる。
・そろばんを習う
・小学校卒業
→高校受験に余裕で間に合います。
一方、中学受験を考えているひとたちは、どうでしょうか。
中学受験をするひとたちは、小学校3、4年生あたりから塾に通わせます。
ちょうど、そろばんと時期が重なりますね。
タイミングが悪いのです。
では、中学受験でトップレベルを目指している子どもたちは、どうでしょうか。
このような子どもたちは、幼稚園、小学校1年生あたりから公文式に入って、かなり勉強しているので、小学校1、2年生のうちに、四則演算はできるようになります(完成度も高いです)。
その後、小学校3、4年生あたりから塾にいくのですが、それまで時間がありますよね。
その空白の時期にどうするのか、選択肢はつぎになります。
・公文式はやめて、そろばんにいく
・公文式で、先に進む
中学受験から逆算していくと、どちらが効率的かわかりますよね。
「中学受験は四則演算だけではない」ので後者です。
というわけで、そろばんは中学受験と相性が悪いのです。
そろばんの欠点:中学受験と相性が悪い
公文式の長所は「中学受験と相性がいい」
中学受験における公文式の利用法は「小学校三年生くらいまで公文式で計算力などを鍛えて、その後は別の塾に行く」のようです。
理にかなった効率的な方法ですね。
しかも、しつこく繰り返し計算問題を解かせているので、計算ミスも極力なくすことができるようです。
また、四則演算以外の計算問題の訓練もできます。
公文式の長所:中学受験と相性がいい
公文式の欠点は、計算力を維持するのがたいへん
前述したように、公文式の計算法の根底にあるのは「暗記」です。
たとえば「2+8=10」を忘れてしまえば、計算問題はできなくなります(「122+88」がすばやく計算できるのは「2+8=10」などの知識が瞬時に出てくるためです)。
さて、ひとは誰しも覚えたものはつぎつぎと忘れていきます(エビングハウスの忘却曲線が有名ですね)。
だから、何度も「忘れる→覚えなおす」で、記憶を強化していきます。
計算問題も同じです。
忘れないように、定期的に覚えなおす、つまり「毎日計算問題を解くこと」が欠かせません。
中学受験をメーンに考えているのであれば、「毎日30分、計算問題を解く」というのはスケジュールに組み込みやすいので問題はないと思いますが、それでも計算力を維持するのは大変と思います。
わたしの考えは「幼少のころに、そろばんができるようにすればいいだけでは?」
高校受験ならば、小学校四年生あたりから、そろばん教室に行かせることをお勧めします。
四年生にもなれば四則演算はできるので、そろばんも苦労なく習得できるのではないでしょうか(ただし、そろばん教室との相性はあります)。
その際、二級あたりで辞めたほうがいいかもしれません。
二級あたりで十分に暗算できるようになりますし、一級は難易度が高いためです。
中学受験ならば、幼少のころに「親」がそろばんを教えるといいのでは、と思っています。
公文式にいこうが、親が教えようがどちらでもいいのですが、先取りで子どもに「繰り上がりがあるたし算」「繰り下がりがあるひき算」を教えて完成度が高くなったころに、そろばんを教える感じです。
こうすると、中学受験の大切な時間を費やす必要はありませんし、(どこまで親がそろばんの練習をさせられるかによりますが)計算問題もあまり解かなくても、素早く正確に計算できるようになります。
そうは言っても、中学受験を考えているのならば、そろばんを習得させる時間で先取り学習させたくなりますよね!